茅ケ崎・じっとりけだるい夕べを歩けばベースの重低音が無指向に広がる胸さわぎの腰つき

散策
鎌倉、湘南、横浜を中心に散策します
2023年9月30日(土)

生まれ育って22年間を過ごした茅ケ崎。

海洋性の、控え目で明るい商店が点在する東海道線の南側、地元民はこれを「海側」、対して東海道線北側を「山側」と呼ぶ。「山側」といっても山は無いが。

山側住民だった私は道が狭くてアクセスしにくい海側にはさしたる興味はなく、むしろ海なら江の島・鎌倉由比ガ浜、商業地なら横浜・東京にばかり目がいっていた。10代20代の若かりし頃ではごく自然な成り行きであろう。

茅ヶ崎駅から海に向かって歩くなど、もしかして史上初めてのことではなかろうか。

時刻17時半。夏の終わりがいつ「終わる」のか、肌に湿度がまとわりつく、暮れなずむ茅ヶ崎駅南口。

エレクトリックベースとバスドラムの重低音がかすかに聞こえてくる。

オーディオファンならご存じの通り、中高音は指向性があるので音源と聞く位置が重要となるが低音にはそれはない。したがってスピーカーの中で低音を受け持つウーファーやスーパーウーファーは部屋のどこにおいてもかまわない。屋外であれば、方角は定かではないがあたり一帯が響いている、という状態になる。

「雄三通り」は海に向かって南へ一直線。駅前メイン通りに存命歌手の名前が付けられている。確か昔は「上原謙通り」だったはず。加山雄三も父の跡を継いで、通りのネーミングライツを相続したということだ。

1.3㎞の通りは、半分進んだところで東西に走る「鉄砲道」と交差する。鉄砲道なら多少なじみはある。国道1号線と国道134号線の間に挟まれ、洒落た小店が多い道である。

歩くうちに夕から夜へ、商店が絶えて戸建てやマンションが並ぶ住宅街となり、街灯の間隔も広がってあたりは薄暗くなってくる。

重低音の音量が増してきた。

音源に近づこうとしても市の職員かボランティアが立ちはだかり、わき道にそれることはできない。

海岸に出た。

国道134号線を渡り、浜辺に行くことも考えたがそこは更なる人だかり、危険な匂いもするし音源からは遠ざかる。何より進行方向は自分で決められない状況にあるのだ。駅に引き返すしか選択の余地はない。

そもそも立ち止まることを許してはくれない。

とあるマンションの鉄柵の向こう側、妖しい紫の照明は茅ケ崎公園野球場の特設ステージに設けられたもの。距離にして150mほど西の方角である。

耳を凝らす。

♪映ってもっとbaby すてきに in your sight、と聞き取れた。

歩道にまで出張ってビールを提供する店。

50台以上の、髭が似合うロン毛のおじさんや日焼けが似合うおばさんが元気に語り合っている。

中高年だけではない、若い者たちも、ただ歩くだけではあるが満足している様子だ。

老若男女。

国民的バンドといわれる所以である。

コメント

タイトルとURLをコピーしました